日本の戦後選挙制度は様々な変遷を経ているが、特に平成以降、小選挙区制、マニフェスト選挙、ネット選挙、18歳からの選挙権など多くの変革が行われてきた。今、かつての公職選挙法制定をめぐる議論に改めて目を向ける必要があるのではないだろうか。
内閣の諮問機関・選挙制度調査会の計8回(1949年、1951年、1952年、1953年、1955年、1956年、1957年、1959年)、総計2,700頁を超える審議内容を収録。総目次一覧・検索のほか、全文検索も可能としました。※
対象となる研究分野:選挙法・公法・行政法等の法学分野、政治学分野、政治史 など
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日本大学 法学部『政経研究』第57巻 第2号(2020年10月発行)に解題「DVD-ROM 選挙制度調査会議事速記録/選挙制度資料 昭和二四~三四年」安野 修右 が掲載されました。
【解説より抜粋】日本大学法学部 安野修右
選挙制度調査会の審議内容は極めて多岐に及んでいる。選挙制度に関する事項で、同調査会で審議されていないものは存在しないと言っても過言ではない。衆議院・参議院・地方議会の選挙制度はいうに及ばず、選挙権の要件、選挙管理行政、選挙取締行政、選挙運動規制、政治資金規制、選挙争訟に関する制度、日本国憲法改正の国民投票制度まで、ありとあらゆる制度の在り方が議論されている。
また選挙制度調査会には各界の代表的人物が参加している。研究者としては、宮沢俊義、蝋山政道、矢部貞治、中村菊男、吉村正、大石義雄などの名前が目に付く。実務家としては、坂千秋(元内務次官)、鈴木俊一(元自治事務次官、元東京都知事)、小林与三次(元自治事務次官、元読売新聞社長)、金丸三郎(元自治事務次官、元参議院議員)、新井裕(元警察庁長官) などが著名である。他にも牧野良三(全国選挙管理員会第三代委員長、51年・52年・53年同調査会会長)、川島正次郎、小沢佐重喜などの政治家、あるいは海野普吉(元弁護士、全国選挙管理委員会第二代委員長)などの法曹関係者の名前も見受けられる。無論、ここで挙げた人名は実際の参加者の一部であるが、そうした重要人物が審議のなかで選挙制度に関して自らの思うところを率直に述べていることに選挙制度調査会の大きな特徴がある。
したがって『選挙制度調査会議事速記録』は、選挙制度の問題を扱う様々な研究者にとって大きな資料価値をもつ。例えば特定の公職選挙法の条文の法解釈に関する審議内容は、当該条文をより精緻に理解しようと望む法学者にとって有益でありうる。また選挙の執行・取締に関しては、関係官庁の関係者が率直な見解を述べているが、これは戦後初期の選挙ガバナンスに関心をもつ政治学者・行政学者にとって重要でありうる。あるいは当時の主要な学者、政治家、実務家の発言が記録されていること自体、同時代の選挙法の変遷に関心をもつ歴史学者や政治学者にとって貴重でありうる。

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