第2版への序文
本書の第1版は1996年に刊行されました。Marcel van den Broeckeによる本書は、オルテリウスの有名なTheatrum Orbis Terrarum(世界地図帳1570年刊)及びその後のすべての版を比較研究した世界でも始めてのものです。各地図ごとに詳細な説明が加えられ,あらゆる状態の違いが挙げられていました。 いかなる地図研究者も、このような形式で詳細な説明を加えたことはこれまでありませんでした。主だった地図研究学術誌のレビューではすべて高い評価を受けており、今後の地図研究の規範となるだろうと述べられていました。 実際に、本書内のそれぞれの地図に振られた番号は世界基準となり、他の多くの地図研究書や論文、図書館データの記述、オークションや古書店のカタログ記載などに使用され、そのほとんどは「Ort」ナンバーではなく「van den Broecke」または「vdB」ナンバーとして記載されています。 数年前に本書は絶版となり、リプリントかあるいは改訂版を出すべきか検討したところ、それまでにいくつもの新しい事実が判明し、また他の学者の研究に基づいて、いくつかの訂正も行いたいということになり、新しく版を改めることになりました。前版の改訂および増補が多く行われています。 どのように訂正が行われたか,その一端をお知らせいたしますと,前の版に掲載された234点の地図のうち,6枚(Ort27, Portugal. Ort64, Liege. Ort74, Artois. Ort188, ローマ帝国. Ort195, Gallia Vetus. Ort225, Erythraei)は、すでに収録されているものよりも後の段階のものであることが判明しました。またOrt178, Geographia SacraはJanssonius of Orteliusの手によるOrt179, Geographia Sacraの後の複製であることが判明しました。詳細については,変更のあったそれぞれの地図の下に記載されています。 また1996年以降に発見された地図が追加されています。Ort11(1)はOrt11、Americasの3枚目の地図ですが、これのごく早い段階のものをほぼ同じように複製したものです。よって掲載された地図は234枚ではなく、229枚になります。第1版では234枚の地図に372点の状態の異なるものがありましたが,今回は229枚に524点の状態の異なるものが掲載されています。 |