「議会資料」（Parliamentary Papers）とは、広義には議会とその機能に関して公的に刊行されたあらゆる記録の総称です。これを、利用する歴史家の立場から2分することが出来ま す。ひとつは院の議事日程、議事内容に関連した記録であり、もう一方は院の活動に関係して院の内外から提出された記録です。前者の中で広く知られているの は「議会日誌」(The Journals)と通称されているもので、「庶民院議会日誌（Journal of the House of Commons）」と「貴族院議会日誌(Journal of the House of Lords)」があり、1547年以来数世紀を通じて現在もなお同じ記録方式が踏襲されて刊行されています。19世紀以前には多くの委員会の記録があり、 研究者にとってとりわけ18世紀のものは重要とされています。つまり、18世紀に「議会日誌」の中に記録されていた委員会報告書は漸次19世紀に入るとパ ラレルに独立して委員会報告書として後述のブルーブックとして刊行される様になりました。
このほかに議会の討議内容を収録したハンサードが有ります。W.コベットの「議会史」を引き継いで1829年以来刊行されている「ハンサードの議会議事録」(Hansard Parliamentary Debates)がそれです。
英国議会、精確に言えば連合王国議会から発行された議会報告書【ブルーブック】には、歴史・経済・商業・社会・法律の分野に限らず全ての分野について非常 に価値ある原資料が収められています。特に、世界の５大陸を舞台にした、英国の歴史における１９世紀から２０世紀初頭の躍動の経過、即ち産業革命の影響・ 政治組織の改革・奴隷制度の廃止・運輸と通信技術の発達・アフリカと極東の幕開け等々がこれら議会報告書に色濃く反映しています。
英国の議会が法律を制定するにあたり、社会経済問題・外交事情・その他必要事項についての報告を含めた議会報告書は種々雑多な数多くの記録文書に溢れてい ます。即ち、議会報告書は議会の記録ばかりでなく「社会の記録」とも言えるものです。これらの政府、或いは議会報告書は、当時多くの国々の立法部で同じよ うに刊行されてはいましたが、その数は１９世紀に特に著しく増加して来ました。その内でも英国ほど量におけるその規模と迅速さ、そして質において卓越さを 誇るところはないでしょう。大量の報告書の印刷は、そのコストが比較的に低廉であったため海外の国々から集められた大量の情報や統計を発行することに、議 会が躊躇しなかったことにもよりました。これはこの時期の世界における英国の卓越した位置による理由であると推測されます。１９世紀の偉大な変革と称され るもの、即ち植民地主義・議会における民主主義の発展・産業革命等はいずれも如何なる国よりも英国と密接に関係していたからです。英国議会報告書の価値 は、そこに収録されている報告書が産業革命と大英帝国の拡張によって引き起こされた変革を最も良く解明している事実に有ります。
１９世紀に発行された議会報告書は、この世紀の世界の蔭の部分にも焦点を当てており当代の世論の包括的な横断面そのものを形成し２０世紀の問題に対しての 解決のヒントを与えています。この価値は歴史学者ばかりでなく社会学者、政治学者、経済学者、そして「過去」よりも「現代」に関心を持つ全ての人たちに とって有益なものと言えます。
議会報告書がその他の重要な局面を形成しているものに、外務省と植民地の領事官との往復書簡の収録があります。これらの資料は外交史の研究に不可欠のもの ですし、この項目は超国家組織の生誕と共にその重要性は益々大きくなって来ています。旧英国植民地および隣接国家の歴史の研究に重要なものです。書簡集は 英国の植民地の歴史の史実を跡づけるだけでなく、民族事情に関しても貴重な情報を提供しています。
【分類】について。 19世紀を迎えると共に、資料の保存と整理に意が用いられるように成りました。1801年から各会期の終わりにその議会に提出された資料は、数巻に纏めら れます。まず、法案・委員会報告書及び収支関係の報告と雑記録に分類され、更に夫々がアルファベット順に配列されています。これらの巻には夫々１８０１年 から現代まで通算して巻数が記され、この「バウンド・セッショナル・セット」の第何巻に該当するかというのが、議会資料を表示する第一の方法に成っていま す。第二に、夫々の会期毎に新しいナンバー表示が行われています。この議会報告書の種類は四つのグループに区分されます