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American Broadsides and Ephemera 『アメリカのブロードサイドとエフェメラ』を推す

マサチューセッツ州中央部のウースター市にあるAmerican Antiquarian Societyは、アメリカ合衆国屈指の研究所である。そこに所蔵されてきた、エヴァンズの書誌に纏められたEarly American ImprintsのSeries I(1636-1800)、ならびにシューメーカーによるSeries II(1801-1819)が、Readex社によってデジタル化され日本の図書館からも直接にアクセスできるようになったことは実に画期的なことであっ た。これらを居ながらにして充分に、しかも簡単に扱えるようになったことは初期アメリカの研究の広がりと奥行きを格段に進歩させたことは疑いことのできない事実である。

今回、新たに提供された資料は、これら二つのシリーズにも劣らぬ重要性をひめたものであり、この時代を扱うアメリカ研究に とって新たな展望と可能性が開かれることはこれまた疑いえない事実である。この資料は、American Broadsides and Ephemeraと呼ばれるもので、今回提供された、そのシリーズ Iは１７６０年から１９００年におよぶ三万点の印刷物である。ブロードザイドとは大型一枚に印刷された号外とでも呼べるもので、歴史的事件、話題、流行など民衆の生活に直接かかわる記事が掲載されているものである。もう一つはエフェメラと呼ばれるもので、日常の社会生活で使われたさまざまな印刷物のコレクションである。広告、ビラ、招待状、証明書などが、オリジナルの色彩そのままにデジタル化されている。

当然ながら、これらの資料はこれまで書誌化されたことがなく、収集されてはいても、その研究用途は限られていた。今回、精緻に分類されたこれらの資料は項目によって検索が可能となり、ある 件名や人物名などによって検索すれば即座に関連した資料を見ることができる。これらによって初期アメリカの民衆が何を求め、何に憧れていたか、当時の文化 的趣味や希求するものがどのようなものであったかが、手にとるようにわかる。たとえば、初期アメリカの社会がイギリス本国から政治的に独立していったにも かかわらず、どのような文化的親近感を本国の文化に感じていたかが、現実の生活レベルのさまざまな側面で伺い知ることができるのである。その意味でこれら の資料の意義は極めて大きく、Early American Imprintsの提示する文化的様相を補完するものとして、あらたな研究の展開を示してくれるものと思われる。その意味で、これらの貴重な一次資料を日本にいながらにして扱える、American Broadsides and Ephemeraは推賞せずにはいられない利用価値の高い第一級のデジタル資料であると、確信を持って言いうるものである。

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Naoki Onishi Professor

Field of Specialization : American and English Literature
Current Research :
Culture, religious and racial interrelations in the British colonies in 17th-century New England. Cultural relationships between Japan and the United States in the late 19th century. The poetry of Emily Dickinson: its society and culture.
Education : B.A., M.A., Ph.D. (ICU), B.A. (Amherst)

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