マリー・ストープスMarie Stopes(1880-1958)は20世紀に活躍した最も重要な女性の一人です。現在では一般に普及した避妊の権利を推進し、社会に知らしめたその活 動で彼女は何百万人もの女性を救ってきたと云えます。
ストープスは初め植物学者として名を成し、女性として初めてマンチェスター大学の理学部教授に迎えられ石炭に関する研究で世界的な評価を得ました。 しかしながら、不幸な結果に終わった最初の結婚生活の体験を経て、彼女はその関心の矛先を幸福な結婚・健全な夫婦生活・そして産児制限のあり方といった問 題に向けるように成りました。彼女はやがて科学的調査・理解に基づいて、性的充足を求める世の女性の助けとなる様な本を書く決心をします。
刺 激的なポルノグラフィや煽情的な恋愛小説とは一線を画した格調ある言葉で、男女の肉体交渉という倫理基準の厳しい当時にあっては告訴を恐れて曖昧に扱われ たり、避けられる事の多かったテーマに正面から対峙した最初の作品Married Love(1918年刊行)は、社会に広く受け入れられ、実に28度も版を重ね、また多くの外国語に翻訳されました。同様の問題に悩み、苦しむ多くの人た ちの存在を知った彼女は、著作を通じてのみならず、講演活動・巡回展示・相談所設置などの活動を展開して女性達に語りかけていきました。1935年に世界 初の産児制限のための診療所を創設するなどの精力的な活動の傍ら、多くの著作を世に送り続けました。
それらは皆、保守的な社会風潮の中に 存在する反対者達【医療関係者・ローマカトリック教会】との闘いの中で生み出されたものでした。然しながらその反対者達でさえ彼女の持つ大きな影響力を認 めない訳には行きませんでした。対立的立場にあった、別の家族計画推進団体の会長、マーガレット・パイクでさえも、ストープスの偉大な存在を高く評価して います。
本コレクションでは、彼女 の人生・思想の発展を見るだけでなく、20世紀前半の間に社会医学や性に関する理解がどの様な変遷を辿ったのかを概観する事が出来ます。彼女の蔵書票が 貼ってある旧蔵書2点などを含む貴重なコレクションです。
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小田光雄氏が同氏のブログにて2回にわたり「マリー・ストープス」について書かれております。非常に面白い文章ですので是非ともご一読ください。
* 古本夜話58 マリイ・ストープス『結婚愛』 (2010/10/28)
* 古本夜話59 マリー・ストープスと能 (2010/11/04)
【関連資料】
『第八代エルギン伯爵と幕末日本』 -日英条約と日本でのスコットランド人ディアスポラ研究- 北 政巳 著 四六版・280頁 2,900円(税別)ISBN 978-4-89253-578-9 多くのスコットランド人が技術と教育を携えて海外に進出し、また逆方向にヨーロッパ、アメリカまた日本からの多数の留学生が留学した。人口比ではイングランドの六分の一のスコットランドから、ほぼ同数の移民数が新天地を目指した。歴史研究の一つの目的は、まさに「温故知新」であり、常に新しい解釈と分析方法を求めることも事実であろう。その意味では、本書の意図する「第八代エルギン伯爵のアジア」を通してのスコットランド人ディアスポラ(離散共同体)の研究視座は、幕末明治日本研究に新しい視野を与えうると確信する。(プロローグ「第八代エルギン伯爵と幕末日本」より抜萃) http://www.bunsei.co.jp/ja/2009-10-22-09-03-31/1285-ergin.html
『御雇外国人ヘンリー・ダイアー』 -近代(工業)技術教育の父:初代東大都検(教頭)の生涯- 北 政巳 著 (創価大学教授) ISBN978-4-89253-369-3 定価 ¥3,000(税別) A5版 228頁 Board装製本・カバー付・クリーム色 中性紙使用 [推薦文] 有馬 朗人 (元東京大学学長) 今度、日本の工学の恩人ダイアーのことが北政巳教授の名筆で「御雇外国人ダイアー」として上本されることを、私は心から喜んでいる。 http://www.bunsei.co.jp/ja/2009-10-22-09-03-31/126-henry.html
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