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北米剣道大鑑


北米剣道大鑑 LOGOkendo_montage

推薦のことば

この復刻版に盛り込まれたドキュメントは、太平洋戦争勃発期における、北米西海岸地域日系人の歴史に、貴重な一石を投げかけるものである。

ノーマ・フィールド
(シカゴ大学教授 東アジア言語・文明学部長)


The documents complied in this reprinted book offer a valuable glimpse into the history of West Coast Japanese Americans about the time of the outbreak of the Pacific War.

Norma M. Field
William J. & Alicia Townsend Friedman Professor and Chairperson,
Department of East Asian Languages & Civilizations, University of Chicago

=復刻版=

「北米剣道大鑑」


全2冊セット 定価45,000円 + 消費税
ISBN4-89253-101-4
菊版 クロス装 総頁数 1,500頁
写真豊富 解題・解説共

 

「復刻版 北米剣道大鑑 新序文」


現在、ハーヴァード大学剣道部と慶応義塾体育会剣道部は兄弟関係にある。春休みを利用して慶応側がボストンを訪れ、夏にはハーヴァード側が慶応の夏期合宿に参加する。一昨年秋、私もボストンを訪れ、ハーヴァード剣道部の稽古に参加したが、その熱心な稽古振りに心を打たれた。防具も竹刀も、勿論稽古着も袴も不足している中で本当に真剣な稽古が続く。稽古の後、懇談の時、彼ら彼女らからこんな言葉を聞いた。「私たちは剣道を単なるマーシャル・アーツとして練習しているのではありません。剣道を通じて日本の心と文化を学んでいるのです。」この一言は強烈だった。「有難う、今度また稽古しような。」、その折ようやく私が返した言葉。すべてが便利になり、交流の機会も第二次世界大戦前とはまったく異なっている現代でも、ただ技術を学ぶだけでなく、心と文化を学ぼうとする若人が剣道にたどり着く。しかし指導者も少なく、防具と竹刀の入手困難が海外への剣道普及の妨げになっている。第二次世界大戦以前、剣道を国際的に普及させようとする時、その困難はおそらく我々の想像を絶するものがあるにちがいない。『北米剣道大鑑』が出版されたのは一九三九年の事と聞く。私が生まれた二年後の事。当時のアメリカでの剣道の普及が如何なる困難に遭遇したか、想像にあまりある。

いただいた資料に目を通し、中村藤吉先生のお名前を見て本当に驚いた。高一の冬、ごく短期間だが、天沼の中村先生の道場に通い、中村先生に素振りの手ほどきをしていただいた。間もなく遠くに引っ越してしまったが、私の恩師の一人、こんなご経歴をお持ちとはまったく知らなかった。敗戦後、剣道禁止の時代に、何とか剣道を守ろうとして苦労されておられた先輩の御一人と受け止めていた中村先生が、私の生まれた頃から北米大陸に剣道を普及させるべくご苦労された事を知り、改めて感動している。この度、『北米剣道大鑑』の復刻版が計画され、着々企画も進んでいると聞く。誠に喜ばしい。願わくばより多くの方々がこの希書を手にとられ、先人の夢を追い、自らも剣道の普及に世界中に雄飛せられん事を心から願う。


平成十二年十二月十八日

衆議院議員・三田剣友会々長
橋本 龍太郎













「復刻版 北米剣道大鑑 新序文」

一九〇五年三月、ワシントン大学新フットボール・スタジアムが竣工した。 その記念式典の一環として、シアトルでは剣道の演技が披露されている。 これが、当地シアトルの最も古い剣道関係記録である。 本書が上梓された一九三九年までに剣道は、北米西海岸の多くの市町村で活況を呈していた。 本書の内容は基本的に、これら地域の剣士録であり、道場史であって、住所や貴重な記録写真を収録している。 彼等剣士達は、同時に傑出した日系社会の指導者達であり、その意味で本書は歴史を学ぶ者にとっては不可欠の人名録となっている。 つまり、本書には太平洋戦争前夜における日系人の生き様が濃縮された形で残っているのである。本書には数多くの寺院や日本語学校・教会・公会堂の写真があり、そこで剣道の稽古が行われていたことを伝えている。 剣道関係の記念写真がこれほど多く収載されている書物も他にあるまい。 かてて加えて、本書には北米剣道界の歴史が、日本人移民の揺籃期から掘りおこされ、こと細かに記録されている。 日本の真珠湾攻撃により、本書に描写されていた世界は一挙に崩壊し、今日に至るまで、いわば埋もれたものとなってしまった。 ところが、こんな方法でその跡をたどることが出来る。 タコマ仏教会の建物の前にあった小さな銀杏並木が、悲しいかな将来は予見出来ないけれども、ともかく、今では現に大きく育っている。 往年のシアトル剣道館は、元の位置に現存しているが、しかし、もう一つの悲劇と勝利の記念碑として残り、今ではその名も神聖な日系二世退役軍人会館となっている。 本書の写真の中に見える若い剣士の或る者は、斯界の長老として尊敬され、今でも稽古に余念がない。 しかし、地名は変わり、かっての光景は今やなく、道路や再開発の荒波を受けて消滅してしまった。

真珠湾攻撃の直後、本書を所蔵していた多くの者が、この本を焼いてしまった。 天皇や軍人・大将の写真や愛国的な揮毫が本書の巻頭を飾っていたからである。 恐怖にかられた一般市民は、剣道が日本の軍国主義と繋がっているかもしれないということを知っていた。 事実、米国連邦捜査局(FBI)は、本書をして真珠湾攻撃直後に、すべての剣道教士たちを一網打尽に逮捕するための道具に使ったのである。 関係当局によるその動きをみると、これは一般人の強制収容よりもはるかに先だって開始されていたのである。こうした理由により、本書はほとんど残っていない。 我々の知るところでは、わずかにワシントン大学、スタンフォード大学フーバー戦争・平和研究所、カリフォルニア大学ロスアンゼルス校、シカゴ大学に所蔵されている。 もちろん、個人で所蔵しているという情報もないわけではない。日米両国の多くの者が、本書の所在を探索しているけれども、不成功に終わっているのが実状だ。 このことから云ってもワシントン大学東アジア図書館で本書を所蔵している事実は注目されて良い。 本書の復刻に際して、衷心より感謝を申し上げる。 


二〇〇〇年九月

アメリカ合衆国ワシントン州シアトル市
ワシントン大学図書館レファレンス・閲覧サービス担当ライブラリアン
トーマス・E・ボーリング
[編訳・奥泉 栄三郎]


『北米劍道大鑑』本文総目次



【第一篇】 日本建國の大觀
上古時代の情勢
中古時代の日本
近古時代の日本
近世時代の日本
明治時代の日本
大正時代の日本
現代の大日本帝國
・愛國行進曲
・大日本帝國皇室
・大日本帝國皇族
・王族及び公族
・御歴代皇紀
・皇統御略譜

【第二篇】 忠魂烈士傳
楠木正成
赤穗義士
橘中佐
廣瀨中佐
乃木大将
大山元帥
東鄕元帥
空閑少佐
肉彈三勇士

【第三篇】 日本劍道發達史
劍法組織時代
實戰經歴時代
形兵法家時代
道具改良時代
撃劍完成時代
撃劍興行時代
警視廳流時代
武德會派時代
試合劍道時代
劍道の敎義
武道百歌
・明治天皇御製五首卷頭
・武道入門者の十訓

【第四篇】 高名劍士列傳

【第五篇】 現代一流劍士略傳

【第六篇】 西洋の劍技

【第七篇】 アメリカ建國の概觀
植民時代
建國時代
國民的發展時代
世界的政策時代
今日のアメリカ

【第八篇】 日米國交史
初期の日米關係
日露戰役迄の國交
近時の日米關係
・北米劍道大鑑の發刊に際して 北米武德會々長 塚本松之助

【第九篇】 北米武德會沿革史
加州開發の概觀
加州の地理的素見
大桑港の偉觀
北米武德會の偉觀
役員後援者略歴
中村敎士奮鬪の足跡

・整備時代を迎へて 南加州聯盟會々長 橋本數市
・南加州讃歌

【第十篇】 中加聯盟會史
南加州の沿革史
南加同胞史
ロスアンゼルス小史
南加聯盟會略史
サンピドロ開發史
サンピドロ同胞史
サンピドロ諸團體
サンピドロ支部略史
支部役員略歴
ロングビーチ支部史
ドミングスヒール支部
・劍道大鑑の發刊に當たりて 沿岸聯盟會々長 壽村逸發

【第十一篇】 北加沿岸劍道聯盟史
聯盟創立の端緒
サリナス支部概觀
ワッソンビル支部
キャンベル支部
アルバラド支部
モントレー支部
コンコード支部小史
・建國傳來の國民道德 北加聯盟會々長 岡田 治郎

【第十二篇】 北加聯盟會々史
櫻府平原の大觀
北加地方聯盟會史
サクラメント劍道支部
オーバン支部概觀
大正區支部
フロリン支部
メリスビル支部
バカビル支部史
スースン支部小史
ルームス支部小史
セバストポール支部
・劍道大鑑發刊の辭 中加聯盟會々長 白川 時夫

【第十三篇】 中加聯盟會々史
中加平原の略史
中加聯盟の沿革
フレスノ支部会史
ハンホード支部
ファラー支部史
リードレー支部
ダイニューバ支部
デラノ支部小史
ベーカスフイルド支部
マデラ支部小史
バイオラ支部小史
バイセリア支部概觀
リンゼー支部
・二世劍士諸君に望む サンオーキン聯盟會々長 藤森壽一

【第十四篇】 サンオーキン聯盟史
サンオーキン平原概況
サンオーキン劍道聯盟
スタクトン支部
牛島謹爾の活躍
ローダイ支部小史
・國民精神の體得 西北部聯盟會々長 奥田 平次

【第十五篇】 西北部聯盟會史
ワシントン州沿革
中村敎士一行の來講
シアトル沿革史
シアトル劍道支部史
タコマ支部略史
サムナー支部
サウスパーク支部
ホワイトリバー支部沿革史
オレゴン州沿革史
央州邦人發展小史
央州支部の設立

附録

第二世諸君に望む 著者 籾井一劍










復刻版『北米剣道大鑑』解題・解説


奥泉 栄三郎

目   次

第一章 太平洋戦争への道と平行して
北米における日系社会の剣道 …… その特別の意味
日本膨張主義に躍った側 …… ハバを利かせた別働隊
子弟の思想善導・教化政策のために …… もう一つの戦前期
『北米剣道大鑑』刊行以降終戦まで …… 一九三九―一九四五

第二章 敗戦後における剣道の厳禁とその復権
連合国軍最高総司令部(SCAP)の剣道政策 …… GHQ(剣道)調書
再出発の時代 …… 戦後一〇年間の記録を中心に

第三章 本書出版社としての北米武徳会と新日米新聞社
北米武徳会
新日米新聞社

第四章 戒書録 ―― 歴史史料の救いのために
未完成の効用 …… 書名の役割(書名と本文のブレ)
類書は乏しく …… 検索の結果(スペシャル・コレクション)
写真は語る …… 絵解き(記念撮影写真を観る)
本書の相対的な意義 …… 研究材料・人名録
「日本研究」における一九三〇年代と日系出版文化
剣道と日系新聞・新聞記者
日系讃歌 …… シンギング日系ソングス
折々の記録 …… 備忘録

第五章 関係者列伝 ―― 八人の日本人・日系人の肖像
籾井 一剣 (Momii Ikken) 出版者・編著者・実業家
中村 藤吉 (Nakamura Tokichi) 範士・日本主義者
高野 佐三郎 (Takano Sasaburo) 東京高等師範学校教授
森 寅雄 (Mori Torao) 範士・国際主義者
安武 嘉一郎ファミリー
菅野 末ファミリー
宮原 広次ファミリー
河合 伊三太ファミリー

付 録
(一)日系人慣用地名等名称一覧
(二) 剣道図解
(二―一)防具(Armor)
(二―二)構え(Basic Postures)
(二―三)剣道の理念(Concept of kendo)
(二―四)武道入門者十訓 
(三)『教育勅語』
(三―一)『教育勅語』詳解(音読み)
(三―二)『教育勅語』英文謹訳(Imperial Rescript on Education of 1890)
(四)対訳『北米劍道大鑑』総目次
(五)米国の日系団体(一九四四年十月)
柔道道場と有段者会(訳)
(六)占領下の日本「新生剣道」とは
(七)太平洋戦争開戦時日系団体幹部芳名録
(八)太平洋戦争開戦時米国政府刑務所拘置者氏名
(九)フォートミゾラ抑留所入所者氏名

あとがき





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