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【戦前期】国宝・重要文化財建造物 修理工事報告書集成 Print
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【戦前期】国宝・重要文化財建造物修理工事報告書集成

鈴木嘉吉 監修
藤井恵介 編集



記録再生への期待


鈴木嘉吉(すずきかきち)(財)文化財建造物保存技術協会理事

「以印刷代謄写」。昭和戦前に刊行された国宝建造物修理工事報告書の奥付には必ず こう記されている。日本の文化財保存事業は明治三十年の古社寺保存法によって始ま るが、その最初から修理竣工後の報告書提出が義務づけられていた。todaiji

工事中に作成し た図面や写真が添えられて末永く保管すべき行政資料とされたのである。報告書は初 期には毛筆で墨書されていたが、やがて複数部作成可能な謄写に代った。 冒頭の言葉はその公文書を一般公開した意を示している。昭和四年に国宝保存法に改められると 修理現場での調査態勢が強化され、報告書の内容も工事中に発見・解明された学術的 事項が次第に増えてゆく。


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昭和五年に刊行された『東大寺南大門史及昭和修理要録』は印刷の最初例であるが、 発掘調査まで含む高度の学術書となっている。ただしこれは落慶式の記念として寺が 経費を負担したもので、事業費の中に印刷費を含め建物ごとに必ず報告書を刊行する こととしたのは、昭和九年に始まった法隆寺昭和大修理からである。法隆寺では昭和十 年の東大門(第一冊)から同十八年の夢殿・東院回廊(第九冊)までほぼ毎年刊行されて いる。これに刺激されて昭和十一年ころから全国各地の修理工事でも報告書を刊行する例が 増すが、これらはまだ関係者の熱意によるところが多く、そのため昭和二十五年に文化財保護法に移行する以前の報告書は四十冊に満たない。

報告書は記録保存を第一義としたので写真は原則的にコロタイプ印刷された。焼付 写真は変色するがコロタイプは変わらないと云われたものである。しかし用紙の劣化 は防ぎようがなく戦前の報告書の大半は黄ばんでボロつき始めている。今回の復刊では、最新の電子技術によって原図版以上の緻密さでの再現が期待され、特に図面は別にCD化されて、一層活用し易くなるものと思われる。「以CD代印刷」の時代にふさわしい記録再生となる上に、従来の入手困難の嘆きを解消する点で喜ばしいことである。


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企画のことば

藤井恵介(ふじいけいすけ)(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻教授)

現在、国宝や重要文化財に指定されている建物で、修理工事を受けているものであ れば、まず修理工事報告書を開けて見ることが、その建物について最も効率の良い情 報の入手方法である。修理工事の時には、精密な調査が実施されるから建物の創立や その後の修理について多くの知見が得られる。また修理前と修理後では大なり小なり 建物の形が変わってしまうことも通常のことである。修理工事報告書にはこれらの事 柄が正確に記してあるから、とにかく最初に修理工事報告書を開けて見る必要がある。

修理工事が終了した後、その報告書の刊行が慣例となったのは昭9年から始まった 法隆寺の昭和大修理からである。戦後になってからはほとんどの場合、修理工事報告 書が刊行されていると言ってよいだろう。ただ、残念なことに修理工事報告書は発行 部数が限られているので、それを揃えている図書館を確保しておくことが重要である。 しかし、そこでもまず見ることが出来ないのが戦前期に刊行された報告書である。

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戦前の修理工事報告書は、多くが散逸してしまいほんの一部だけが現存するが、大 きな公共図書館、大学図書館でもめったにお目にかかることはない。 今回の企画では、戦前に刊行された修理工事報告書を網羅することを第一の目標と した。現段階で知られる限りのものをリストアップしたが、遺漏があるやもしれず、 読者諸賢の情報も期待している。今回復刻の総計四十三点のなかには、法隆寺・東大寺・興福寺と いった奈良のものから、津久夫須麻神社本殿、仁科神明宮本殿、西明寺本堂など、建 築の歴史を知る上で欠かせない重要な建築が多く含まれている。

そして、さらに関係の深い他の報告書も加えた。報告書のさきがけと言うべき、東大 寺大仏殿の明治修理に関わる『大仏及大仏殿史』を加えたのは、元の本そのものを眼 にした読者がほとんどいないだろうという憶測による。法隆寺東院の地下から斑鳩宮 跡と目される掘立柱建築群を発見した記念碑的な発掘調査の報告書『法隆寺東院にお ける発掘調査報告書』も加えた。本来、法隆寺東院の諸建築の報告書とセットとして 考えるべきであろう。正福寺地蔵堂のものは、昭和8年の修理時に稿本だけが作成され、 その複写をもとに戦後発行されたものである。

現在は、復刻出版にも電子技術が援用されており、かつてのような写真複写に頼るだけの時代ではなくなって来ている。小部数のニーズにも対応できるオンデマンド出版はその有力な方法だし、添付のCD-ROMに図面情報を収録することが出来たのも大きな成果である。元々の報告書の印刷が読みにくい場合も拡大することで理解出来るし、各種の加工を施せば簡単に新しい図が創出できる。古い建築の新しい解読方法が開発されることにも大いに期待している。


各巻所収の全ての図版が添付のCD-ROMにも収録されています。
拡大などの画像加工、論文への所載等も可能です。
サンプル画像1(モノクロ・115kb) サンプル画像2(カラー・94kb)
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